【注意】医学生が医療面接等を担当することについて、上級医が患者に許可を得ていることが前提となっている。
1. 導入部分
1.1. 自己紹介
医学部医学科3年のレオナルド・ダ・ヴィンチと申します。レオです。
※ 外国人の名前は聞き取れないことが多い。フルネームを伝えた後に名札を見せながら、ゆっくりと大きな声でニックネーム(例「レオです」)を伝える。
1.2. 患者確認
1. (ご)本人確認のため、お名前をフルネームで[教えていただけますか・お願いします]。
2. 〇〇さんですね、ありがとうございます。
3. 次に、生年月日と(ご)年齢を[教えていただけますか・お願いします]。
※ 「安全確認のため」という言い方はしない。安全確認は医療者側がすることであり、患者がすることではないため。
※ 「名前をフルネーム」で確認することは重要事項であるため、一度に「名前、生年月日、年齢」を聞くよりも、分けて質問した方が確実に聴取できる。
1.3. 面接を行うことの了承を得る
1. [本日・今日]、担当させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
2. ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
2. 現病歴
2.1. 開始部(オープン・クエスチョン)
1. [本日・今日]は[どうなさいましたか・どうされましたか]。
2. 【主訴】んですね。
※ 主訴の確認には「んです」を使う。
例)患者:お腹が痛くて来ました。
医師:お腹が痛いんですね。
例)患者:胃のむかむかが治まらなくて。
医師:胃がむかむかするんですね。
※ 主訴が聞き取れなかった場合は「もう一度お願いします」と聞いてみる。
※ 主訴がどうしても聞き取れないが、知りたい場合、「それを他の言葉/他の表現で言い換えると、どんな感じですか?」と聞いてみる。
※ それでも聞き取れなかった場合は、次の【さらに聞く】に進んで質問する(例:そうなんですね 。そのことについてもう少し詳しく教えていただけますか)と、患者に話してもらうことで主訴が理解できる場合がある。
2.2. さらに聞く
もう少し詳しく教えて頂けますか。
[その【主訴】・そのこと]について、もう少し詳しく教えていただけませんか。
【主訴】ということですが、そのことについてもう少し詳しく教えていただけませんか。
※ 「先ほど【主訴】とおっしゃいましたが、」を何度も言うと、患者はプレッシャーに感じる。日本語の場合、「You said, ~」に当たる「あなたが言いましたが、」という表現は、患者には責任を押し付けられているように感じる。
※ 確認をする場合は、
・現在のことであれば「○○とのことですが、~」
・過去のことであれば「〇〇とのことでしたが、~」
例)患者:2年前から息切れが始って、最近ひどくなってきました。
医師:そうなんですね。2年前からとのことでしたが、~
✕ 患者にとって答えにくい質問
悪い例
・その【症状】が始まったときの状況を教えてください。
日本語の場合、「その時の状況」と言われても患者は何を答えてよいのか困る。
何を聞きたいのかが分からない。具体的に質問した方が答えやすい。
良い例
・その【症状】が始まったときは何をされていたんですか
・何をしていたときにその【症状】が出たか覚えていますか
✕ 患者にとって答えにくい質問
悪い例
・X年前から【症状】が始まったとおっしゃいましたが、その前はどうでしたか。
「その前」と言われてもいつまでの「前」を指すのか分かりにくい。言葉を足して質問した方がイメージしやすい。
良い例
X年前から【症状】が始まったとのことでしたが、
・それ以前にも、過去にも同じような症状が出たことはありますか
・同じ症状が過去に出たことはありましたか
3. 医学的情報
3.1. 部位
・どの辺りが【症状】ですか。
・【症状】の場所を[指してもらえますか・示していただけますか]。
・その【症状】はどのあたりですか。指していただけますか。
・どの辺りが【症状】か、場所を教えてもらえますか。
例えば、頭の両側(りょうがわ)とか、胸の上の方とか、背中の真ん中とか。
・ずっと同じところが【症状】ですか。その【症状】が移動したりしてしていますか。
※ 場所が明確に示せない場合もあるため、「例えば、〇〇とか、〇〇とか」と、いくつか例を挙げるとよい。
3.2. 性状
・どのような【症状】ですか。
・どんな【症状】ですか。
・例えば、≪鈍い痛み≫ですか。≪鋭い痛み≫ですか。
・例えば、≪差し込むような痛み≫とか、≪鈍い痛み≫とか、どのように≪痛み≫ますか。
3.3. 程度
3.3.1. 程度
・その【症状】はどの程度ですか。例えば、〇〇ができないくらいとか。
・その【症状】は強くなったり弱くなったりしますか。
・その【症状】が始まったときはどのくらいでしたか。今はどのくらいですか。
・その【症状】はずっと同じ程度で続いていますか。
それとも[重くなったり・ひどくなったり]、[軽く・よくなったり][痛かったり痛くなかったり]しますか。
・その【症状】は○○(時間、期間)続いているとのことでしたが、
その後も同じくらい続いていますか。それとも短くなったり長くなったりしていますか。
・その【症状】は○○(時間、期間)前にあったとのことでしたが、その後はどうですか。
※ 継続している状態であれば「ている」を使う
3.3.2. 「痛み」のスケールで聞く場合
・どのくらい痛いですか。
・1から10の10段階で、10が一番痛いとしたら、今はどのくらいですか。
・今まで経験した一番強い痛みを10とすると、今の痛みはどれくらいですか。
・3日前の一番強かった痛みを10とすると、今はどのくらいですか。
・一番痛かったのはいつでしたか。今の痛みはそのときと比べてどうですか。
・その痛みが始まったときはどのくらいでしたか。
・一番痛いときはどのくらいですか。
※ 1から10のスケールは「痛み」にしか使わない。
※ どの時点の痛みについて質問しているのか、時制(tense)に注意。
・今の痛みについて「今はどのくらいですか」
・過去の痛みについて「その時は/一番痛かったときはどのくらいでしたか」
3.4. 経過
・いつからその【症状】ですか。
・いつその【症状】がはじまりましたか。
・その【症状】はずっと続いていますか。
・その【症状】は出たり消えたりしていますか。
・今も【症状】ですか。
・今もその【症状】はありますか。
・ずっと同じくらいの【症状】ですか。
3.5. 状況
・どういうときに【症状】ますか。
・何をすると【症状】ますか。
・どういうときに【症状】になりますか。
・何をしたときに【症状】になりますか。
・その【症状】が始まったときに何をしていたか覚えていますか。
・その【症状】が出たことについて、何か心当たりはありますか。例えば、いつもと違うものを食べたとか、どこかにぶつけたとか。
※ 過去の状況について質問する場合は時制(tense)に注意。
・どういうときに【症状】ましたか/でしたか
・何をしたときに【症状】になりましたか
3.6. 増悪・寛解因子
・どういうときにその【症状】は[ひどく・強く・重く]なりますか。
・どういうときにその【症状】は[楽に・よく・軽く]なりますか。
・何をするとひどくなりますか。
・何をすると楽になりますか。
・どうしたら楽になりますか。
※ 下記の質問は、「患者が自発的に何をしたか」を聞いているので、増悪・寛解因子を聞いていることにはならない。
・その苦しさに対して何をしましたか。
・3日前、苦しかったときに、何をしましたか。
・3日前の苦しさに対して、どう対処されましたか。
・痛みを抑えるために何かしましたか。
※ 「悪くなる」は注意。意味は理解できるが不自然。 ?「痛みが悪くなる」→ 痛みが[強くなる・強まる・ひどくなる] ?「息切れが悪くなる」→ 息切れがひどくなる ?「動悸が悪くなる」→ 動悸が激しくなる
3.7. 随伴症状
・その【症状】以外に、何か他の症状はありますか。例えば吐き気とか、動悸とか。
・[部位(例:お腹)]以外に、背中や肩やどこか他に【症状】ところはありますか。
・例えば、
・胸は痛くありませんか。
・胸が痛いとか、背中が痛いとかはないですか。
・目が見えにくいこととか、喉に違和感があったりとか、どうですか。
・吐き気や嘔吐はありますか。
*アクセント「嘔吐:おーと(HLL)」3拍
・咳や痰はありますか。
*アクセント「せきやたんは」(せ きや:LHL)(たんは:HHH)
・どのような[咳・痰]ですか。
*表現「空咳(からせき)」=痰が出ない乾いた咳
「痰がからむ」=痰が喉に張り付いたようにまとわりついて出てこないようす
「痰がからむような咳が出る」
・その【症状】の際に、何か他に気になる症状は[ありましたか・ありますか]。
・その【症状】の際に、体調で何か気になることは[ありましたか・ありますか]。
※ 何か症状があったとしても、患者自身はそれを症状だと思っていない可能性もあるため、「何か他に気になること はありませんか」と聞くことも場合によっては必要。
※ しかし「気になること」と言われると、患者によっては「心配事」と捉える可能性もある。ある程度の症状を聞いたうえで「気になること」と質問するようにする。
※ 「ありますか」と「ありませんか 」の違いに注意。「ありませんか」は、ないことが前提になっている場合か、「他にはもうないですね?」と再確認する場合に使う。
3.8. 日常生活に及ぼす程度
・その【症状】で何か日常生活に差しさわることはありますか。
・そのことで何か普段の生活に影響することはありますか。
3.9. 症状に対する対応
■ 今回の主訴のために何か薬を飲んだか
・このことで/今回の症状に対して、何かお薬を飲まれましたか。
・症状が出てから何かお薬を飲まれましたか。
・どんなお薬を飲まれましたか。
・そのお薬の名前は覚えていますか。
・そのお薬を飲んでどうでしたか。効きましたか。
■ 定期的に服用している薬があるか
・普段、何か定期的に[飲んでいる・飲まれている]お薬はありますか。
・お薬についてですが、普段、何か定期的に飲んでいますか。
・今回の【症状】でどこか他の病院を受診されましたか。
※ 表現に注意
「病院を受診したことがありますか」=他の病院に行った経験があるかどうか
「病院を受診しましたか」=今回のことで受診したかどうか